肝臓のページ
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肝臓の構造と働き
肝臓は、人体の中で最大の重さの臓器です。体重の約1/6の重さで、約1kg程度の重さです。
肝臓の位置は右の上腹部にあり、上面に横隔膜、下面には胃、結腸や腎臓などと接しています。また、心臓や肺と同じように肋骨で囲まれ守られています。
肝臓の働き
食べ物の消化に必要な胆汁の合成と分泌
脂肪の消化、吸収を助ける胆汁をつくるはたらきをしています。
体に必要な蛋白の合成
食物のタンパク質は体内に入るとアミノ酸に分解され吸収されます。吸収されたアミノ酸は肝臓に集められ人ね体にあったタンパク質に合成されます。
栄養の貯蔵
食事で取った炭水化物は、ブドウ糖として吸収されます。吸収されたブドウ糖(グルコース)はグリコーゲンの形で肝細胞に貯蔵しています。
必要に応じてグリコーゲンをグルコースに戻してエネルギーとして血液中に放出する役割をしています。また、ビタミンなども蓄えており、必要に応じて血液中に放出する役割をしています。
ブドウ糖は体を動かすエネルギーです。また、脳はブドウ糖をエネルギーとしているため、供給が止まると脳の働きも数分で止まってしまいます。
解毒作用
アンモニアやアルコールなど体にとって有害な物質を分解、解毒するはたらきをしています。
アルコールは、肝臓で酵素により炭酸ガスと水に分解します。
その他、体にとって有害な物質の多くは肝臓で分解されて解毒されます。
血液の貯蔵
肝臓には体の全血液量の10分の1(約500 mL)の血液が含まれています。食時の後で胃腸で血液が必要になった場合や、出血して血液が足りなくなった場合に血液を補給する役割をしています。
肝臓の病気〜肝炎〜
肝炎は、何らかの原因により肝臓に炎症が生じる疾患です。炎症が起きると肝臓の細胞が破壊され、肝臓の機能が低下していきます。
炎症が起き、肝細胞が破壊と再生を繰り返すと、徐々に硬くなり、肝臓の働きも悪くなっていきます。一般的に肝臓の働きが、正常の30%以下になるまで症状があらわれないと言われています。
肝炎には、急性肝炎と慢性肝炎があり、急性発症する肝炎を急性肝炎、慢性的に炎症を生じる肝炎を慢性肝炎といいます。
急性肝炎
急性肝炎は短期的に肝臓に炎症が起こる疾患で、ウイルス性、自己免疫性、薬物性などが原因でなり発症します。自然治癒、ウイルスの排除により症状が治まりますが、ウイルスに感染すると数週間から数か月後に、身体のだるさ、食欲不振、黄疸、吐き気などの症状があらわれることがあります。また、重症化して劇症肝炎になり命に関わる状態になる事もあります。
慢性肝炎
慢性肝炎は、6ヵ月以上肝臓の炎症が続いた疾患です。ウイルス性、薬物性、アルコール性、肥満などなどが原因となります。肝炎ウイルスとしてはB型、C型ウイルスによる慢性肝炎が多く注意が必要となります。
慢性肝炎になり炎症が長期化すると、肝硬変や肝がんになりやすくなります。
肝炎の原因
肝炎の原因として、ウイルス感染、真菌細菌感染
、自己免疫性、アルコール、薬剤、放射線障害
、遺伝代謝などがあります。
ウイルス性肝炎
肝炎の原因には、ウイルスの感染によるウイルス性肝炎の割合が多く、ウイルス感染による自己免疫反応によって肝臓の細胞が障害されます。
肝炎の原因となるウイルスは、主にA〜E型肝炎ウイルス,ヘルペス, EBウイルス、サイトメガトウイルスなどが知られています。
(D型ウイルスによる感染は、日本ではほとんどありません。)
(EBウイルスは、ヘルペスウイルスの一種です。)
急性肝炎で発症して軽症の場合もありますが、進行して劇症肝炎になる場合もあります。慢性化して、慢性肝炎に移行すると肝細胞壊死や、肝機能障害、線維化、肝硬変症などが引き起こされる場合もあります。
特にB型ウイルスとC型ウイルスによる肝炎は、慢性化しやすいとされており、放置すると肝硬変や肝がんなどに進展していく場合もあります。
感染経路
A型ウイルスやE型ウイルスは、ウイルスによって汚染された水や食べ物を摂取することで感染します。
B型ウイルスやC型ウイルスは、血液を介して感染します。そのため、輸血や性交渉、母児感染などが感染の経路となります。
自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis:AIH)
自己免疫性肝炎は、何らかの原因による自己免疫の異常による肝炎です。自分自身の肝細胞を異物として勘違いし攻撃してしまい自分の体内の免疫が破壊してしまう肝疾患です。
はっきりとした原因はわかっていませんが、ウイルス、薬物の服用、妊娠、出産などが関係していると言われています。
他の自己免疫性疾患を合併することもあります。
また、遺伝的な要因で発症するリスクが高まるとされています。
(自己免疫: 本来ウイルスや細菌などの異物を攻撃して体を守るために働く免疫機能)
アルコール性肝炎
お酒の飲みすぎ(アルコールの摂取のしすぎ)により肝臓を悪くし、肝臓に炎症を起こす疾患です。飲酒によりアルコール性脂肪肝となり、さらに悪化するとアルコール性肝炎になります。
さらにアルコール摂取を続け肝炎が続くとアルコール性肝硬変となる場合もあります。
一般的に、1日の飲酒量(アルコールに換算)が60gを超えると多量飲酒となり治療の必要となることもあります。
脂肪肝
脂肪肝は、肝細胞に多量に中性脂肪が沈着した状態のことをいいます。通常の正常肝組織には約3%の脂質(りん脂質が中心)が含まれているが、5〜10%の脂質(中性脂肪が中心)が含まれるようになります。
脂肪肝になると肝障害を引き起こす可能性が高まります。
肝臓に脂肪が貯まる理由
脂質や糖質を食事で摂取すると小腸で吸収された後、肝臓で脂肪酸、ブドウ糖に分解され中性脂肪がつくられエネルギーとして必要な時に使うために、肝細胞の中に溜め込んでいます。
消費するエネルギーと中性脂肪の溜め込みがバランスがたもたたれている場合には肝臓に中性脂肪はたまりませんが、運動不足などで消費エネルギーが少なかったたり、脂質や糖質を摂りすぎで中性脂肪を多く溜め込むとバランスが崩れ、肝細胞や皮下脂肪に中性脂肪が溜まっていきます。
アルコールの大量摂取や、肥満、過栄養、糖尿病、高カロリー輸液、薬剤、内分泌疾患、先天性代謝異常などが原因となります。
肝臓の腫瘍
肝臓にできる腫瘍には大きく良性腫瘍と悪性腫瘍に分けることができます。
肝臓にできる良性腫瘍は多くみられ無症状の事が多いですが、まれに腫瘍により右上腹部の不快感、肝臓の腫大、腹腔内の出血などの症状が現れることがあります。
肝臓の良性腫瘍には主に肝嚢胞、肝血管腫、肝臓の肉芽腫などがあります。
肝臓にできる悪性腫瘍は、さらに原発性と転移性に分ける事ができ、原発性は肝臓から発生した腫瘍、転移性は、肝臓以外の部位から転移してきた腫瘍です。
良性腫瘍〜肝嚢胞〜
肝嚢胞は肝臓の内に袋状に水がたまる良性の腫瘤です。一般的には自覚症状もないため健診などで偶然に発見されることが多いです。肝臓のどの部分にも発生し、被膜に囲まれた円形や楕円形をした腫瘤です。大きさ数cm以下のものがほとんどで、サイズの変化はあまりありませんが、まれに非常に大きくなることがあります。
10cm以上の大きなものの場合には、肝臓周囲の臓器へ圧迫する事もあります。
もし肝嚢胞が破裂したり、出血した場合には治療が必要となります。
肝嚢胞の頻度は、40歳以上の人が80%を占めており、女性がやや多いといわれています。
また、右葉と左様で比べると右葉がややに多く発生するとされています。
肝嚢胞は、先天的、外傷性、炎症性、寄生虫によるものや腫瘍などがあります。その他に、遺伝性の病気で肝臓に多数の嚢胞が出来る多発性肝嚢胞もあります。
肝嚢胞の数による分類
孤立性嚢胞
多発性嚢胞
多発性嚢胞は、腎嚢胞の合併が30~50%と高率で、高血圧や腎機能低下を伴う場合もあります。
肝嚢胞の原因
大きく分けて寄生虫性と非寄生虫性があります。
非寄生虫性
先天性、外傷性、炎症性、腫瘍性があります。
先天性の肝嚢胞は、母体でのなんらかの異常によるものです。性ホルモンや、経口避妊薬により肝嚢胞ができるともいわれています。
また、胎生期に残った肝臓内の胆管が拡張したものともいわれており、高齢になってから発見されるのは、年齢とともに胎生期に残った肝臓内の胆管が増大するためとされています。
外傷性の肝嚢胞は、交通事故などで強くぶつけたり、外から受ける熱などにより肝臓が傷害を受けた後に生じるてできる嚢胞です。
炎症性の肝嚢胞は、有害な刺激を受けた時の免疫反応(原因となるものを取り除こうと防御反応)により、熱を持ったり腫れたりする炎症が原因でできる嚢胞です。
寄生虫性
寄生虫性はまれで多くは非寄生虫性です。
寄生虫性肝嚢胞はおもに汚染された生水を飲むことでおこります。原因となる寄生虫は、エキノコックスの条虫の幼虫(包虫)です。エキノコックス(肝包虫)と呼ぶことがおおく、肝臓に住み着いて肝嚢胞を作ります。虫卵に汚染された水や食べ物、ほこりなどを人が飲み込むことで感染します。体内に入ると十二指腸の中で幼虫となり、腸管から門脈に侵入し肝臓で増殖し嚢胞を形成します。
肺、骨髄などに感染する場合もあります。場所を問わずエキノコックスが寄生する疾患を総称して「包虫症」と呼びます。
寄生虫が原因の肝嚢胞には、「単包虫症」と「多包虫症」の2つがあります。
単包虫症
単包虫症は、単包条虫の感染により起こり、大きなのう胞を形成するのが特徴で破裂しないかぎり予後は良好です。日本では極めてまれです。
多包虫症
多包虫症は、北半球の寒冷地に広く分布しています。日本では主に北海道にみられ、キタキツネが感染源と報告されています。感染後十数年で肝障害をおこし、肝不全や門脈圧亢進症から死に至ります。